標準フォーマットを保ったまま情報を守る「フォーマット準拠暗号化」
画像や映像を暗号化する場合、通常はデータ全体を暗号化することで第三者から内容を隠します.しかし,そのような方法では,標準的な画像ビューアや映像プレイヤで扱えなくなる場合があります.フォーマット準拠暗号化では,JPEG・HEIF・点群圧縮などの既存フォーマットとの互換性を保ちながら,視覚的な内容を保護することを目指します.これにより,標準的な復号器や配信システムを利用しつつ,画像・映像・3次元データの内容を適切に隠すことが可能になります.本研究では,圧縮処理の内部構造や予測・変換・量子化・エントロピー符号化の性質を解析し,フォーマットを壊さずに暗号化効果を与える手法について検討しています.
メディアデータを効率よく表現する「圧縮符号化」
画像・映像・点群などのメディアデータは,そのままでは非常に大きなデータ量を持ちます.圧縮符号化は,データの冗長性を取り除き,限られた記憶容量や通信帯域の中で効率よく情報を保存・伝送するための基盤技術です.PSM-LABでは,JPEGやJPEG XS・HEIF・JPEG XL・点群圧縮などの圧縮フォーマットに着目し,それぞれの符号化処理がどのようにデータ表現を変化させるかを解析しています.特に,変換・予測・量子化・エントロピー符号化といった処理が,画質・圧縮効率・情報保護に与える影響を重視しています.圧縮符号化を単なるデータ削減の手段としてではなく,暗号化や解析処理と組み合わせるための重要な情報表現として捉え,次世代のメディア処理技術への応用を目指しています.
圧縮されたデータをそのまま活用する「圧縮領域からの機械学習」
近年,画像や映像を対象とする機械学習では,大量のデータを扱うことが一般的になっています.一方で,すべてのデータを完全に復号してから処理する方法は、計算コストやメモリ使用量の面で大きな負担となる場合があります.圧縮領域からの機械学習では,画像や映像を完全に画素領域へ戻すのではなく,圧縮データに含まれる特徴量や中間表現を活用して,分類・検索・認識などの処理を行うことを目指します.たとえば,変換係数・量子化情報・予測モード・符号量分布などは,元のメディア内容に関する有用な手がかりを含んでいます.本研究では,圧縮データの構造を活かした効率的な特徴抽出や,暗号化された圧縮データに対する解析・検索技術について検討しています.これにより,プライバシー保護とデータ利活用を両立する新しいメディア処理の実現を目指します.